院長インタビュー
平成9(1997)年に大阪大学大学院を卒業し、その後、カナダ・トロント大学への留学、岡山大学での研究者としての生活を通じて、一般的な歯科治療だけでなく、口腔外科治療、発音・摂食・嚥下障害への治療、生理学・解剖学・薬理学といった専門的な知識・技術を習得した岸本院長。
歯科医師としての原点、研究者としてのキャリア、患者様への思いなどをお聞きしました。
“運命の導き”で歯科医師の道へ
資格取得のためではなく
“学ぶ”ことを大切に考えて大学院へ
歯科医師を目指されたきっかけは?
元々は医師を目指していて、大学入試に際して共通一次試験(現在のセンター試験)を受けたのですが…この時、英語のテストのマークシートのマークをし忘れるというミスをしてしまい(笑)、「どうしようかなぁ」と色々と思い悩んだ末、医学部ではなく歯学部を志願しました。
この時点ですでに一浪していて、まったく方向性の違う大学を受験するとなると大変ですし、やっぱり医師として将来仕事がしたかったので、歯科医師の道を選びました。
ある意味、「運命の導き」で歯科医師の道を歩み始めた?
そうですね。当時は色々考えましたが、今となっては歯科医師の道を選んで良かったと思っています。
大学を卒業した後、大学院へ進学されていますよね?
これはあくまで私個人の考えなのですが…他学部で大学院へ進学し6年かけて卒業する方は修士論文の提出が求められますが、医学部や歯学部の場合、6年かけて勉強して、卒業試験や国家試験を受けて医師・歯科医師免許を取得します。これだと「覚えた知識をテスト用紙に書いて、資格を取得した」というだけで、「大学で学ぶ」ということの本来あるべき姿とは違うのではないかと思ったのです。
特定の分野に興味や疑問を持ち、それに対する適切なアプローチ方法を学び、結果を導き出して考察し、学会に属して発表・プレゼンテーションを行うというのが、本来の「大学での勉強」で、そういう訓練をきちんと受けたいと思って大学院へ進学しました。
大学院への進学に際して、父に相談したところ快く承諾してくれたのですが、「ただし、学費は自分で払うこと」という条件でしたので(笑)、アルバイトをしたり、奨学金を利用したりして大学院を卒業しました。
研究者としての日々が
今の自分の力・自信に繋がっている
具体的にはどのような研究を?
大阪大学には「顎口腔機能治療部」という部門があり、私はそこの出身なのですが、ここでは当時口唇口蓋裂の患者様への音声言語機能障害を担当していました。
口唇口蓋裂とは先天性異常の1つで、生まれつき上唇が避けて口と鼻が中で繋がっているという状態です。そうした方への外科的処置、また発音障害が現れることが多いので、発音のための訓練などを歯科領域からどうアプローチするかについて研究していました。それに付随して、摂食嚥下機能を診るということも行っていました。
こうしたことは今でこそ歯科領域の重要な分野の1つですが、当時は「歯医者がすることではない」と言われていて、「ようやく時代が追いついて来たな」と感慨深いですね。
大学院卒業後、海外や他の大学の研究施設で研究者としてキャリアを積まれていますよね?
カナダ・トロント大学歯学部へ2年間留学し、その後、岡山大学歯学部共同研究施設で生理学・薬理学・解剖学の研究を行いました。
先ほど「特定の分野の興味を持ち、アプローチして結果を考察する」ということが本来の大学での勉強と言いましたが、現在、色々なところから講演に招かれて、収集した情報を資料としてまとめて、大勢の方の前で発表して端的にわかりやすく伝えられるようになったのは、研究者として訓練を重ねた日々のおかげだと思っています。研究者としての日々が、今の自分の力や自信に繋がっています。
口腔内を専門的に
そして総合的に診るプロフェッショナル
口腔外科を専門的に行う歯科医師としての矜持は?
口腔内全体を専門的な目で診て、異常を見落とさないようにすることです。例えば、口腔内の重篤な疾患の1つに口腔がんがありますが、同じ歯科医師でもこれを見落としてしまうケースがあります。口腔がんは他の部位にできるがんと違って「目で見えるところにできるがん」です。そのため、見落としは絶対に許されないと思っています。
従来、歯科医療では「歯しか診ない」という傾向が強かったのですが、今はそれではだめで、口腔内を総合的に診ることが大事です。そのためにも開業医として自分の医院を持つようになった今も、「プロフェッショナルな目」を養い続けています。